BRIEFING.140(2007.05.24)
評価時点の相違と鑑定評価額の信頼性(2)
前回、不動産の鑑定評価における「価格時点」(@)と「評価時点」(A)との関係、及びその前後関係による信頼性の程度について考察した。
すなわち、Aは@の6ヶ月ほど後の方が、事例資料が十分に収集できる可能性が高いため信頼性が高いということである。
さらに、6ヶ月後ではまだ分からん、5年は経たねば評価できん、という説もある。確かに、バブル期の例を持ち出すまでもなく、歴史は後になって評価されるものである。
但しこれには反論もあり、後になって分かる価格はその評価時点の価格ではないというものである。同一の対象不動産、同一の価格時点であっても、評価時点が異なれば鑑定評価額は異なって当然と言うわけである。
ここでこれらを以下の通り整理する。
1.速報重視説(現在時点の評価を尊重)
2.確報重視説(概ね6ヶ月後の評価を信頼)
3.後年見直し説(歴史的見直しが必要)
速報重視説、確報重視説は、資料が十分かどうかという技術的な違いであり、この2つと後年見直し説とには「歴史の評価は時代に左右されるか否か」に係る本質的違いがある。
そして、速報重視説でも、確報重視説を不要または排除すべきとする説(強行説)と、やった方がよい場合もあるとする説(容認説)が考えられる。
また、後年見直し説にも、随時見直しを行い、最終の評価額のみをよしとする説(最終説)と、評価額は評価時点の数だけあってよいとする説(随時説)とがあろう。
バブル期の不動産の価格を、当時、平成5年頃、10年頃、そして今、と評価時点を変えて評価してみれば、はたしてどうだろう。
さらに5年後にもう一度評価したらどうだろうか。ひょっとすれば「あれはバブルではなかったんだ」という結果になっているかも知れない。