BRIEFING.228(2010.07.15)
積算価格における取壊し費用の考慮(2)
前回、3通りの割引率、3通りの残存耐用期間で、建物取壊し費用(8,000万円)の現在価値を求めた。今回は、これが建物取壊し費用考慮前の積算価格に対し、どれくらいの割合かを求める。
建物取壊し費用考慮前の積算価格は、前回示した通り、残存耐用期間50年(新築)で20億円、25年で15億円、0年(取壊し直前)で10億円である。
残存期間 | 7% | 5% | 3% |
50年 | 0.0014 | 0.0035 | 0.0091 |
25年 | 0.0098 | 0.0157 | 0.0255 |
0年 | 0.0800 | 0.0800 | 0.0800 |
上表の通り、残存耐用期間50年や25年の時点における取壊し費用の現在価値は、不動産全体の価格から見れば無視できる程度である(25年で3%の場合はやや苦しいが)。
もちろん残存耐用期間0年(取壊し直前)なら、その費用を丸々控除しなければならない。この例では、積算価格の8%にもなる。実務上は、更地価格(比準価格、収益価格等から求める)から建物取壊し費を控除して鑑定評価額を求める。
では、残存耐用期間20年、15年、10年ならどうだろうか。
割引率5%の場合で詳しく見ると、残存耐用期間10年ぐらいから積算価格の4%を越えてくる。実務上、この当たりから、建物価格と相殺、と見なす場合が多いのではないだろうか。
実際、先が見えてきた建物の積算価格は把握困難であり、市場でも「土地値」で片づけてしまうのが通例であるから、相殺という考え方にも辛うじて理屈があると言ってもよいだろう。
しかし、残存耐用期間がさらに少なくなると、取壊し費用の現在価値が上昇する一方で、建物価格は逆に下落してゆくから、翌年からはこれが通じない。
しかしながら、市場において「土地値」の期間が1年や2年ではないことは周知のことで、築30年もすれば、後はずっと「土地値」と言ってもよいくらいだ。
そうすると、相殺期間がしばらく続くとすることにも屁理屈ぐらいはあると言ってもよいかも知れない。