BRIEFING.255(2011.08.22)

鑑定評価の手法とグリーンビルディング

国土交通省は昨年7月から環境不動産ポータルサイトを開設し、各種情報提供を行っている。また日本政策投資銀行は「DBJグリーンビルディング認証」に取り組んでおり、本年7月、本制度のホームページを開設したところである。

ここでは不動産鑑定評価の手法にあてはめて、グリーンビルディング(≒環境不動産)の価値を考察する。

グリーンビルディング(以下GB)は、建築コストが通常の建物に比べて割高であることから、積算価格は高く求められるであろう。しかし収益価格はどうか。

GBでは電力の消費が抑えられるため、総費用は減少するだろう。但し、GBならではの各種設備の維持管理修繕費が発生する。しかし両者相殺しても総費用は減少すると予想してよさそうだ。

仮にテナントビルで電気代がテナント負担であったとしても、電力消費量が少ないということがテナント募集の武器になり、その分、そうでないビルの賃料より、高い賃料を設定することができるであろう。

また、具体的メリットがなくても、GBの看板で企業イメージの向上を図ることができるし、テナントビルならそれだけで高い賃料が取れる可能性が高い。総収益は増加と予想できる。

以上から、償却前の純収益については上昇を予想する。では償却後の純収益はどうか。

GBであるための各種設備も、やがては耐用期間が満了し、価値を失う運命にある。それを毎期の費用に織り込んでおかなければならない。それは毎年の経年劣化を数値化したものと言える。これを控除した純収益が償却後純収益である。

なお、償却前の純収益から収益価格を求める場合には、それを反映した還元利回りを採用しなければならないため、結果は同じと言うべきである(BRIEFING.092参照)。

収益価格上昇までにクリアすべき関門は次の通りである。

@電気代等縮減と維持管理修繕費上昇を勘案し総費用は減少するか。
Aイメージ効果で総収益は上昇するか。
B上記@Aから償却前純収益は上昇するか。
C償却後純収益でも上昇するか。

積算価格に加え、収益価格が上がれ(Cが難関だが)ば、比準価格も追随するであろう。そうすれば鑑定評価額は当然上昇することとなる。


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