BRIEFING.316(2013.10.17)

式年遷宮型土地利用で建て替えに備えよ(2)

前回、伊勢神宮の式年遷宮における建替え方法に倣い「式年遷宮型土地利用」の提案を行った。それはタワーマンションの建替えについてであったが、今回は、鉄道や高速道路といったインフラの更新について考えてみる。

これらは、長期間その機能を停止することが許されず、特に公共交通機関である鉄道は1日たりとも停止することを避けるべきである。そのため、これらにおいては、マンションの建替え以上に「式年遷宮型土地利用」を採用すべきである。

そこで、今後新たに高架の鉄道を敷設する場合、必ずそれに沿ってそれと同幅員の緑地帯を確保することとする。森にしておいてもよいし、公園として整備してもよい。必要なら駐車場や駐輪場にしてもよいだろう。

そして数10年、あるいは100年程度を経て、さあいよいよとなった時、緑地帯の木々を伐採し、そこに新たな鉄道を敷く。完成すれば今度は古い方のそれを解体して緑地化する。

今日、日々鉄道を走らせながらの連続立体交差化工事には、新築以上の時間と費用がかかっていることは想像に難くない。「式年遷宮型土地利用」ならその無駄もない。

また緑地帯が周辺環境を改善するという付帯効果があることは言うまでもない。それが郊外の山々にまでつながっておれば、虫や小鳥も町までやってくる。たまには猿や猪がやって来ても面白かろう。

緑地帯の土質を考えると農業や林業は困難だ(期間的には檜も育つが・・・)。雑木林でよかろう。それに痩せた土地の方が、剪定の手間が少なくてよい。いや、岩場にでも生える松なら元気に育つかも知れない。そうすると数10年後には松茸狩りの夢も膨らむ。

ところで、数10年も経てば、輸送力増強の名の下、両方を鉄道に使おうという誘惑に駆られる時が来るかも知れない。複々線化である。が、これは我慢しなければならない。また、せっかく育った緑地を皆伐するのはいかがなものかという考えも出てこよう。樹齢60年の桜とか、もったいない・・・。しかしこれも割り切らねばなるまい。

制度の趣旨を忘れぬよう、次世代に伝えねばならない。

さて、すでに成熟社会となった我が国において、新たな鉄道や高速道路の建設は多くない。とすれば、これは新たな都市開発が見込める新興国に向けた提案とすべきだろう。

しかし数10年後の社会における人の移動手段はどうなっているだろうか。伊勢神宮の式年遷宮は1300年間ほとんど変わらね姿であるが、そんなことはあり得ない。ともすれば鉄道沿いの緑地は、次世代、次々世代の笑い物になるやも知れない。

だが、数10年前、100年前に今のことを考えた人々がいたんだ・・・という感動と教訓を、未来の人々に与えるであろう。


BRIEFING目次へ戻る