BRIEFING.400(2016.06.30)
仲介手数料の料率見直しで空家の流通促進を
空家の発生理由についてはいくつか指摘されているところであるが、その第1はやはり住宅用地に係る固都税の課税標準の特例(BRIFING.345参照)であろう。小規模住宅用地(200uまで)なら固資税1/6、都計税1/3で、手厚く空家の“保護”が図られている。
他に税の問題としては、新築住宅の固都税減額(BRIFFING.380参照)がある。新築住宅の取得を支援する反面で中古住宅の取得意欲を減退させ、延いては空家増加を“促進”する結果になっている。
そして、次に指摘しておかなければならないのは、仲介手数料の料率である。
宅建業者が不動産の売買に関して受け取ることができる報酬(いわゆる仲介手数料)は、国土交通省の告示によって次の通り上限が定められている。左は売買代金(消費税別)、右は報酬(消費税込)である。
200万円以下の金額 | 100分の5.4 |
200万円を超え400万円以下の金額 | 100分の4.32 |
400万円を超える金額 | 100分の3.24 |
よく言われる3%+6万円というのは売買代金が400万円以上の場合に当てはまる、消費税別の報酬額である。400万円までの部分で手厚く後は正比例だ。しかし、もう少し高額部分までを手厚くし、逆に超高額部分で大胆に逓減させてはどうだろうか。
都心の数億円かと思われるテナントビル、そのオーナーの元には仲介業者から、売りませんかという手紙が度々舞い込む。人気エリアの駅近中古分譲マンション、そのオーナー宛にもDMが送られてくる。
所有者の住所・氏名は、公図から地番を特定しその登記事項を調査すれば、すぐ掴めるのである。
こうした営業活動の多くは空振りに終わりその手間とコストは大きいが、先に述べたような、価格が高い(報酬も高い)、あるいは、流通しやすい、といった物件に的を絞れば割に合う仕事となる。
反対に、人口減少が続く郊外ニュータウン(オールドタウン?)の一戸建住宅、地方都市の賃貸アパート、駅からバス便の古い分譲マンション、このような物件の所有者には、何のアプローチもないはずである。
仮に宅建業者がそのオーナーから売却依頼を受けても、渋々引き受けてほとんど放置、あるいは断るケースもあるという。このような面白くない案件に関わっていては、おいしい案件を逃してしまうおそれがある。そして、このような物件の多くが空家や空家予備軍なのである。
報酬の上限を定めておくことには一定の合理性がある。しかし、その定め方が、競争市場が生む余剰を縮小させていないか、常に目配りが必要である。たとえば、上表の区切りを500万円超、1,000万円超としてはどうか。逆に5,000万円超なら今以上に下げてもよい。
金持ち優遇との批判もあるだろう。しかし、今まで無視されていた安値物件にも日が当たり、官製の「空家バンク」など作らずとも、空家とその予備軍の流通が促進されるのではないだろうか。