BRIEFING.81(2004.12.3)
利回り法とスライド法の関係
継続賃料を求める手法には、差額配分法、利回り法、スライド法、賃貸事例比較法等がある。このうち、利回り法とスライド法とは、従前賃料を重視し、正常賃料の影響を原則として全く受けない手法である。BRIEFING.69では、その性質から、次の通り別称をつけた。
利回り法 | 純賃料利回り復元法 |
スライド法 | 純賃料額調整復元法 |
両手法の違いは次の2点にある。
1.復元するのが純賃料の利回りなのか、金額なのか。
2.完全に復元するのか、調整して復元するのか。
この2点を組み合わせることにより、次の4手法が考えられる。
完全復元 | 調整復元 | |
利回り | ア | イ |
金 額 | ウ | エ |
アはこれまでの利回り法であり、エはスライド法である。では、イとウはなぜ手法として誕生(または定着)しなかったのだろうか。
それは、金利水準に超長期的トレンドがなく、超長期的には利回りを調整しなくても公平であるのに対し、物価水準には超長期的にはインフレ傾向があり、純賃料は調整しなければ時とともに不公平になってくと考えられるからであろう。
しかし、契約した時点の金利水準に影響されたであろう従前純賃料利回りが、超長期的に平均的な水準ではない可能性がある。また、平均的な水準であったとしても、低金利(または高金利)が相当期間続くようであれば、それを反映した利回りに調整しなければ不公平ではないか。
一方、もし今後、インフレ・デフレが同程度で、超長期的物価水準にトレンドがないとすれば、純賃料を完全復元してもよいことになる。
とすれば、イとウにも意義がないわけではなさそうだ。