BRIEFING.117(2006.8.3)

敷引き特約と消費者契約法

去る7月26日、大阪高等裁判所は、賃貸マンションのいわゆる「敷引き特約」を「消費者契約法に基づき無効」とした大阪地方裁判所判決を支持し、被告の家主側の上告を棄却した。

「敷引き」とは、BRIEFING.6566でも述べたが、関西に見られる習慣であり、礼金や権利金のように、貸主取り切りの一時金であり、敷金や保証金のように原則として借主に変換すべき一時金とこれとを、合計で表示した場合の取り切り部分を言う。

「解約引き」「償却」と呼ぶこともある。

基本的には次のように、一時金の表示方法の違いであり、実質的な差はない。したがって税務上の扱いにも区別はない。

@内数表示(敷金・保証金の内一部が敷引き・解約引き)
A別途表示(敷金・保証金とは別途に権利金、礼金)

Aの方が分かり易いと言われるが、慣れの問題ではないか。

契約期間によって返還部分が増加し、その分、取り切り部分が減少するような約定の場合には、むしろ@の方が分かり易いだろう。

さて、本件一時金の表示は次の@の通り内数表示であった。別途表示にすると次のAのようになる。

@敷金60万円、うち敷引き50万円
A敷金10万円、別途に礼金50万円

本件高裁判決は、一時金の金額を具体的に検討した上で「賃借人にとって不当に不利」と判断したものであり、「敷引き」制度自体の合理性は認めたものと思われる。

本件賃料は8万3千円/月であるから、50万円の礼金は、通常の賃貸マンションとしては、確かに賃借人(消費者)にとって「不当に不利」と思われる。

そして、本件で一時金をAの方法で表示していたとしても結論は同じであっただろう。

「消費者契約法に基づき無効」であることに留意しなければならない。


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