BRIEFING.143(2007.07.02)

不動産の共有持分の価値(2)

国税庁の財産評価基本通達に基づく不動産の評価においては、共有持分の評価について触れていない。

もし、前回の例@の場合で、アカの他人と共有する一戸建住宅の50%の持分を相続してしまった場合どうだろう。

通達通りなら、その評価額はその住宅全体の評価額の50%(評価減なし)となる。しかし実際の価値はそれを下回ると考えられる。

何らかの手だてが必要かも知れない。

もっとも財産評価基本通達に基づく評価では、土地の価格を、時価の80%相当(BRIEFING.001参照)である路線価を基礎にすることができるため、他人との共有による減価をこれが包含してしまうかも知れない。

ところで、通達はなぜ他人との共有による減価を考慮していないのだろう。

それはおそらく、通達が相続を想定しており、親子・兄弟間の共有を前提にしているからではないだろうか。

不動産鑑定評価基準も、共有持分の評価に何ら言及していない

しかし、これに類する事項には触れている。それは「限定価格」である。

その定義は難解なのでここでは省くが、簡単に言うと「市場での価格より高いが、ある人にとっては合理的である価格」と言うことができる。

不動産鑑定評価で通常求められる価格は正常価格であるが、限定価格が求められる場合として、不動産鑑定評価基準には次の様な例が挙げられている。

@借地権者がその底地を取得する場合。
Aある土地の所有者がその隣接地を取得する場合。
Bある土地の所有者が経済合理性に反する分割をさせられて譲渡する場合

共有はこのうち@に類する。つまり共有は基本的には減価要因(市場での価格は低い)であり、他の持分を全部取得する場合には、単独所有が実現するため、他の持分を市場での価格より高く買っても合理的となると考えられる。


BRIEFING目次へ戻る