BRIEFING.155(2007.12.06)

サブプライム・ローン問題で見えてきたこと

米国の信用力の低い個人向け住宅ローン「サブプライム・ローン」は、これを組み込んだ担保証券を引き受けていた金融機関等に巨額の損失を発生させた。そして今、これに対する様々な論評が聞こえてきたところである。

これらを概観すると、概ね次の3点に集約される。

@リスク転嫁を前提とした審査の適否
A格付け機関の客観性・公平性の可否
Bリスク負担会社の経営責任者の責任

@は、ローン債権のリスク移転を前提としている結果、融資の審査が甘くなるのではないかという点である。

Aは格付け機関の問題である。

格付け機関は証券発行体から報酬を得るため、その顔色を伺いがちになるだろうことは想像に難くない。ある程度、発行者の意向を酌んであげたいと考えてもおかしくはない。

会計監査にしろ、不動産鑑定評価(BRIEFING.051133参照)にしろ、つきまとう問題である。

「失われた10年」の後、証券化こそが全てを救うとの風潮もあったが、証券化は万能ではないということに今更ながら思い至らなければなるまい。

証券化とは、資産や債権のリスクを負いたくない人が、それを許容できる人達に分散して負担してもらうしくみである。

いずれにしても、これらは以前から指摘されていたことであり、関係各位には、釈迦に説法の域を出ない話である。

しかし、そうでありながら今日の問題が生じたという点を重く受け止めなければならない。

Bは若干異なる側面からの指摘である。

自己責任が徹底している米国では、損失を被った金融機関の経営責任者らが即、辞任を表明した。@Aを取り上げて泣き言をいうこともなかった。

それで巨額の損失がどうなるものでもないが、サムライはいつでも切腹する覚悟でいるという、株主に対する重要なメッセージになる。

但し、高額退職金の続報は、逆に無責任を印象づけてしまった。

そして今後の論点は、C借り手の救済の当否 に移る。サブプライムの人達にも自己責任を迫るのか、何らかのクリスマスプレゼントを用意するのか、休暇を前に米国当局の対応が注目される。


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