BRIEFING.243(2011.03.28)

今年の地価公示は「なお書き付き公示」

先日、地価公示法に基づき、平成23年1月1日現在の標準地の価格が官報公示された。

それによると、全国平均の対前年比で、住宅地が▲2.7%、商業地が▲3.8%、全用途平均で▲3.0%であった。3年連続の下落とは言うものの、いずれも昨年より下落幅が縮小している。

低金利を背景に、住宅ローン減税や贈与税の非課税枠拡大といった政策が功を奏し、特に3大都市圏で分譲マンションの販売が好調で、その用地の積極的取得が地価の下支えとなったものと考えられる。

しかしこれは1月1日現在の価格であるから、それからおよそ70日後に起こる大震災の影響を織り込んでいるいるはずもなく、今となっては過去のものと言わねばならない。

国土交通省は、今回の発表に際し「東北地方太平洋沖地震により被害を受けた地域にある標準地については、当該震災により標準地の利用の現況、標準地の周辺の土地の利用の現況等が変わっているものもあり・・(中略)・・当該震災の前後で価格等が変化している標準地があることに留意して下さい」となお書きを付している。

全国約2万6,000カ所の標準地のうち、いくつかは、瓦礫に埋もれ、あるいは地盤沈下で水没したままというから「利用の現況」は一変していると言わねばならない。

そこで、異例のなお書き付きで公表された今年の地価公示を「なお書き付き公示」と名付ける。

近年の地価公示につけたニックネームは次の通り。それ以前はBRIEFING.194072参照。

平成23(2011)年 なお書き付き公示・・・・エコポイント。IFRS。新・成長戦略。
平成22(2010)年 ショック公示・・・・・・政権交代。官民ファンド。空室率上昇。
平成21(2009)年 百年に一度の危機公示・・リーマンショック。世界同時不況。

今はただ、1日も早く被災者の方々に平穏な生活が戻ることを祈るばかりである。

なお、前述の「標準地の利用の現況」「標準地の周辺の土地の利用の現況」は、各標準地について公示される項目であり、前者は「住宅W2」(木造2階建住宅の敷地の意)のように、後者は「小規模一般住宅が建ち並ぶ既成住宅地域」のように表現されるものである。


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