BRIEFING.587(2022.11.16)

減価償却費を織り込んだ利回り

不動産鑑定評価における収益還元法の総費用、及び積算法の必要諸経費等の中の「減価償却費」は、近年「計上主義」から「織込み主義」に変化してきたことを、BRIEFING.535536において指摘した。簡単に説明すると以下の通りである。

@計上主義・・・・総費用、必要諸経費等に「減価償却費」を計上。
A織込み主義・・還元利回り、期待利回りに「減価償却費」を織り込む。

では、@からAへの変化が結論(収益価格及び積算賃料)に影響がないような還元利回りの上昇、及び期待利回りの上昇は、どの程度のものだろうか。次に試算してみる。

仮に土地1億円、建物1億円(計2億円)とした上で次のように想定した。

○総収益(=積算賃料)は土地建物価格の8%
○減価償却費は建物価格÷50年
○減価償却費を含まない総費用(=必要諸経費等)は総収益×20%

●収益還元法




 

 
 総収益  総費用  純収益 還元利回り
 
収益価格
 円/年  円/年  円/年   円
@ 16,000,000 5,200,000 10,800,000  5.40% 200,000,000
A 16,000,000 3,200,000 12,800,000  6.40% 200,000,000
    0 -2,000,000 2,000,000  1.00%      0
 
●積算法




 

 
基礎価格 期待利回り
 
純賃料相当額 必要諸経費等 積算賃料
  円  円/年  円/年  円/年
@ 200,000,000  5.40% 10,800,000 5,200,000 16,000,000
A 200,000,000  6.40% 12,800,000 3,200,000 16,000,000
     0  1.00% 2,000,000 -2,000,000     0

@からAへの変更に伴い、還元利回り及び期待利回りを1ポイントずつ上昇させることにより、同じ結論を得た。勿論これは上記想定の下での結果であるが、1つの試算例として参考になるだろう。さらに、経費を考慮しない利回り、即ち粗利、取引利回り、表面利回りといった利回り(上記例では8%)も、実務上は価格検討の材料とされていることから、それとの関係性も分析・検討の必要があろう。


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