BRIEFING.124(2006.12.04)

建設協力金の完済期をまたぐ継続賃料の評価

継続賃料を求める鑑定評価の手法のうち、利回り法及びスライド法は、その特徴から、次のように呼ぶことができる(BRIEFING.6981参照)。

●利回り法・・・純賃料利回り復元法
●スライド法・・純賃料額修正復元法

これらの手法に関し、建設協力金の返還による実質賃料の自然減額をどう考慮するかについては、以前(BRIEFING.121)にも述べたところである。即ち、建設協力金の返還は契約締結後(または賃料改訂後)に生じた事由ではなく、当初から予定されていたことで、その影響は改定に考慮すべきではないということである。

そこでその影響を排除するため、実務上は次の2つの手段が取られる。

@返還期間中の平均運用益を両時点の実質賃料に含める(平均主義)
A運用益を両時点ともに実質賃料に含めない(排除主義)

両時点に建設協力金が十分に残っておれば@、完済されておればAがそれぞれ妥当だろう。悩ましいのは両時点が完済期をまたぐ場合である。

ところで、@とAとで試算賃料はどのように違ってくるだろうか。両手法について支払賃料を試算してみる。なお、建設協力金以外の一時金はないものとし、両時点の運用利回りは同一とする。

●利回り法
 @平均主義(R+I−C1)÷P1×P2+C2−I
 A排除主義(R  −C1)÷P1×P2+C2
 @−A= P2/P1×I−I=I(P2/P1−1)

●スライド法
 @平均主義(R+I−C1)×r+C2−I
 A排除主義(R  −C1)×r+C2
 @−A= r×I − I = I(r−I)

なお、各記号は次の通り。

  従前時点 価格時点
支払賃料  R  
平均運用利回り   I   I
基礎価格  P1   P2
必要諸経費等  C1   C2
変動率     r

利回り法においては、P1>P2 の場合、A>@、スライド法においては 1>r の場合、A>@となることがわかる。


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