BRIEFING.174(2008.08.25)

マンション分譲価格の改定

ここ1年ほど、分譲マンションの契約率低下は顕著である。

用地の仕入れ価格の上昇に加え、鋼材を中心とする建設資材価格の上昇が加わって分譲価格が高くなりすぎたこと、さらに雇用不安の再燃、年金への不信、サブプライムローン問題を背景とする景気の減速などがその原因と言われている。

そこで一部デベロッパーは、すでに分譲の始まったマンションについても、未契約住戸の価格の下方改定を公表している。

これまでは分譲価格を据え置いた上で、登記費用の負担、家具付き、といった付帯サービスで対応するのが一般的で、仮に分譲価格を下げるにしても、個々に、内々に、というのが普通であったから、オープンな値下げは好ましいといってよいだろう。

問題は、既に契約を交わした住戸の価格である。

一旦約定されたものであっても、賃料は改定され、売買価格はされない、という原則について、当コラムで何度か述べてきたところであるが、最近の分譲マンションにおいては、これがかなり危うい。

前述のデベロッパーは、これについても、同等に値下げしたり、同額で広い住戸や高層階住戸への変更を勧めたりしている。

契約済とはいえ、引渡がまだなら価格の遡及改定もやむなしといったところだろうか。

買主にはうれしい話であるが、複雑な思いもあろう。

一方、売れ残りを抱えたまま、竣工・引渡(代金決済、所有権移転も)を終えたマンションもある。これらの引渡済み住戸について、受領した代金の一部を返却するというのは困難だろう。かつて、いくつもの訴訟となった売れ残り住戸の値下げ問題(BRIEFING.002030137参照)に、またも直面することになる。

次の@Aのいずれの場合も、既契約者に対しては、値下げする必要がないのが原則だ。

@契約済みだが、引渡がまだの場合。
A引渡・決済・移転登記が済んでいる場合。

しかし会社の信用を守る必要もあり、原則を貫く訳にもいくまい。だが@はともかく、Aの場合は・・・。今後、売主のむつかしい判断が求められる。


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