BRIEFING.122(2006.10.19)

取引利回りによる物件比較

収益物件の利回りは、いわゆる取引利回りで表示されるのが一般的である。年間賃料収入を価格で割っただけの単純なものであるが、客観的で恣意性の介在が少ない点で評価できる(BRIEFING.74参照)。しかし築年数の異なる建物について、これを同列に比較することはできない。

次の2つのマンションの1室を投資用に検討する場合、どう比較すればよいだろうか。

       賃  料  価 格 取引利回り
20年 10 万円/月×12ヶ月=120万円/年 1,900万円  6.3%
新築 12.5万円/月×12ヶ月=150万円/年 2,800万円  5.4%

取引利回りではAが有利である。

これに維持管理修繕費、公租公課、損害保険料、空室・貸倒れリスク等の必要諸経費を考慮(下記@)してみる。この場合、旧式であるAの方が、経費率(賃料収入に対する必要諸経費の割合)が若干高いと見るべきだろう。

さらに、避けられない建物の物理的老朽化、機能的陳腐化により、建物部分については年々その価値が低下してゆくと考えられるので、これを減価償却費(BRIEFING.4243参照)として考慮(下記A)する必要がある。

ここではこれらを次の通り査定し、賃料収入から控除することとする。


 
@ 賃料120万円/年 ×経費率25%   =30万円/年
A 建物価格 900万円÷残存耐用20年間=45万円/年

 
@ 賃料150万円/年 ÷経費率20%   =30万円/年
A 建物価格1,800万円÷残存耐用40年間=45万円/年

すると利回りは次の通りとなる(BRIFFING.92参照)。


 
@のみ考慮 (120万円/年−30万円/年)÷1,900万円=4.7%
@Aを考慮 (120万円/年−75万円/年)÷1,900万円=2.4%

 
@のみ考慮 (150万円/年−30万円/年)÷2,800万円=4.3%
@Aを考慮 (150万円/年−75万円/年)÷2,800万円=2.7%

@のみ考慮した利回り(償却前純収益利回り)ではAが有利、

@Aを考慮した利回り(償却後純収益利回り)ではBが有利となった。

査定・推定、想定の積み重ねで導かれた数値である点は否めないが、取引利回りのみでの比較は慎みたい。


BRIEFING目次へ戻る