BRIEFING.217(2010.03.04)
事業用借地権上の建物の時価
従来、事業用借地権の設定期間は10年以上20年までに限定され、建物の耐用年数とのギャップが生じていたことは当コラムでも指摘(BRIEFING.114参照)していたところであるが、その後の法改正により、50年未満にまで拡大されるに至っている。
なお、この改正は単なる設定期間の拡大ではなく、同じ事業用借地権ではあるが30年未満と30年以上とでは別メニューであるということに留意が必要である(BRIEFING.165参照)。
さて、法改正はあったものの、改正法施行以前に設定された事業用借地権は、依然として10年以上20年までのものであり、施行後にもこのような期間のものがある。
このような期間の短い事業用借地権の上に建つ建物の価格は、耐用年数を残したままで借地期間満了を迎え、取り壊されることが予想されるが、不動産鑑定評価ではその価値を如何に見るべきであろうか(BRIEFING.114参照)。
原価法においては経済的耐用年数(BRIEFING.056、057、144参照)をどう見るか、収益還元法においては有期還元の期間をどう見るかが問題となる。
それは次のどれを選択するかということでもある。
@契約期間無関係説
A契約期間償却説
B可能性評価説
この点、税務上は節税の阻止といった目的からか@が採用され、会計上は保守主義の原則からかAが採用(有価証券報告書に償却方法を記載)されている場合が多いと思われる。
しかしこれでは、時価の急変が起こり得る。
建物は、再契約されれば引き続き使用されるであろうから、@なら、再契約なしを前提としていた価値が再契約でいきなり復活というおかしなことが起こり得る。Aなら、物理的に評価していた建物価値が、期間満了で更地返還となれば突然0に、それどころか取壊し費用でマイナスに、ということになる。
では、真の時価を求めて再契約の可能性を評価して勘案するBはどうだろうか。はたして可能性を40%とか、60%とか、恣意性を排除して毎期査定可能だろうか。
賃貸等不動産の時価注記が義務化され、さらには資産除去債務(BRIEFING.213参照)の計上も迫る中、多くは重要性の乏しい建物とは言え、放置できぬ論点であり、喫緊の課題と言えよう。